ゴロ-の健康と糖質制限と栄養学の話

健康と糖質制限と栄養学について色々な話題を紹介します

糖質制限実践で重要なこと(5) 糖尿病患者が実践する場合の注意

どうもこんにちは、ゴローです。

 

唐突ですが、私は仮面ライダーシリーズが大好きです。

大学入試の浪人時代に放送していた仮面ライダー龍騎を見てハマったのがきっかけです。

以後のシリーズもほとんど見ています。今放送中のエグゼイドも面白いですね。

個人的に一番好きなのは仮面ライダーWですが、その続編が製作されるようで、今から楽しみです。

 

 

今日の話題は前回の続きで、糖尿病になってしまった人が糖質制限を行う際の注意点について、見ていきたいと思います。

医師との相談の上で行う

ドクター江部の糖尿病徒然日記

糖質制限の第一人者として、京都高雄病院の江部医師がいます。

↑の彼のブログでもある通り、糖尿病患者が行う場合は必ず医師との相談の上で行わなくてはなりません。

 

服薬やインスリン注射で血糖値を下げる治療を行っている患者さんの場合は、ある程度の量の糖質を摂取することを前提に投薬量を決められています。

この状態の患者さんであれば、必ず食事制限も同時に行っています。摂取カロリーの制限と、タンパク質:脂質:糖質のカロリーベースでの比率を指導されています。

糖尿病学会ガイドラインによると、糖質のカロリー摂取比率は60%とされています。

糖尿病診療ガイドライン2016:日本糖尿病学会 The Japan Diabetes Society

 

血糖値を下げる投薬を行っている状態で糖質制限を行うと、想定以上に血糖値を下げることになり、低血糖によるショック状態を引き起こす危険性があり、最悪の場合は命を落とすことになりかねません。

従って、すでに病院での治療を行っている場合は必ず医師との相談の上で、糖質制限を実践しなければなりません。

 

医師によっては糖質制限そのものに反対している方もいらっしゃるので、注意が必要でしょう。

場合によっては、セカンドオピニオンとして、糖質制限を治療に取り入れている病院を探して訪れるのも良いかと思います。

 

耐糖能の低下?回復?

糖尿病患者が糖質制限によって、耐糖能が低下したと言う話と、耐糖能が回復したと言う正反対のことが実際に起こります。

このことについて、考察してみます。

 

Dietary fat content alters insulin-mediated glucose metabolism in healthy men

こちらは健常者に対する研究ですが、糖質制限によって耐糖能が低下したと言う論文です。

耐糖能とは75gのブドウ糖を摂取した時の血糖値の上昇具合と正常血糖に戻るまでの時間帯によって判定されます。

 

糖質制限をするとインスリンの必要量が減るので、膵臓自体が分泌する量を調節します。ここで急に糖質を大量に摂取すると、一度落としたインスリン分泌量をすぐにもとにもどすことは出来ない為、血糖値を十分に低下させることができず、耐糖能が低いと判定されます。健常者であれば膵臓の機能が損なわれたわけではないので、実際に耐糖能が低い状態ではないでしょう。

 

しかし、インスリンの分泌量が少ない=β細胞自体の数が増えないということなので、糖質制限を長期間継続することで、本当に耐糖能が低下する状態になることも十分に考えられます。

 

糖尿病患者の場合はもともと耐糖能が低い状態ですので、インスリン分泌量が極端に少なくなり、耐糖能のさらなる低下を招く恐れがあります。

 

耐糖能低下の根本原因が、インスリン抵抗性によるものか、β細胞の死滅によるインスリン分泌能の低下によるものかで話は大きく違います。

インスリン抵抗性が大きくなった場合、はじめはβ細胞の数を増やすことで身体は適応しようとします。これが限界を迎えると血糖値のコントロール不能になり、膵臓に異所性脂肪が蓄積します。脂肪細胞からは炎症性サイトカインが分泌され、自身の免疫系にβ細胞が攻撃され、β細胞が死滅します。死滅したβ細胞がもとに戻ることはありませんので、この状態から耐糖能をもとの正常な状態に治すことは大変困難なことです。

(可能性が無いわけではありません。)

 

糖尿病歴がどの程度かにもよりますが、比較的初期の段階であれば、耐糖能の低下はインスリン抵抗性によるもので、β細胞の数はまだまだ十分にあると考えられます。

インスリン抵抗性が起こる原因としてはインスリンの阻害物質である中性脂肪血中濃度が高いことがあげられます。

糖質制限によって、耐糖能の回復ができるのはこのあたり、つまり、糖質制限によって体内の脂肪が高度に代謝されるので、血中中性脂肪が低下し、インスリン抵抗性がなくなることで、耐糖能が回復すると考えられます。

 

しかし、一方で病歴が長い場合はβ細胞の死滅がかなり進行していると考えられますので、糖質制限によって膵臓の機能が回復する可能性は極めて低いと言えるでしょう。

むしろ、先の理由によって、耐糖能がさらに低下する可能性の方が大きいのではないでしょうか。

特定の疾患がある場合はできない

糖尿病の合併症では、糖尿病性腎症が進行している場合、肝硬変などを併発している場合は実践不可です。前者は高タンパク食によって、腎臓へのダメージが大きくなるためです。後者の場合、糖質制限によって体内の糖は糖新生によってすべて賄われますが、肝硬変など肝臓の機能が極端に落ちている場合は糖新生が十分に機能しない為、糖質制限は大変危険です。

また、長鎖脂肪酸代謝異常などの場合も、体内のエネルギーを十分に確保できない為、脂質がエネルギー源の中心である糖質制限は実践してはいけません。

いずれにせよ、医師と十分に相談したうえで実践しなければなりません。

 

そもそも糖質制限自体が合併症の発症を抑えるためであって、糖尿病の根治を目指しているわけでは無いことを、十分に理解する必要があります。

 

結論です。

糖尿病患者が実践する場合、合併症の発症にはとても有効ですが、さらなる耐糖能の低下を招く可能性があるので、一度実践したらずっとやり続けて、糖質は存分に食べられないことを覚悟の上でする必要があります。

もちろん、糖尿病で怖いのは合併症ですから、それを防げる可能性がある糖質制限は糖尿病患者がとる選択肢としては非常に有効であることも間違いありません。

ただし、実践には必ず医師と相談の上で取り組むようにしなければなりません。

 

ゴロー