健康に役立つ栄養学(12) カロリーの真実その2
どうもこんにちは、ゴローです。
つい先ほど、このブログのヘッダー用画像サンプルが届きました。
友人のWebデザイナーさんに頼んでいたものです。
明日中にはひとまず仕上がるとのことで、とても楽しみです。
今回の記事は↑の続編になります。
前回のおさらいです。
- 「カロリー」の概念は古く、測定方法に問題がある
- 食品のカロリーと運動のカロリーは定義が違うので、比較のしようがない
- 「カロリー」自体は非常に有意義な指標であるが、具体的な数値を用いてエネルギー摂取の目安とするには不適である
では、このあたりの考え方を元にして、日常生活レベルで肥満を防ぐための具体的な方策を考察したいと思います。
痩せれば何でもいいの?
まずは衝撃のダイエット、アイスクリームダイエットの記事を紹介します。
こちらの男性は一日に2000キロカロリー分のアイスクリームを食べ続け、100日で15kgの減量に成功したとのことです。
さて、見事減量に成功したこの男性、果たして健康なのでしょうか?
記事にもありますが、50日を過ぎたあたりからすべてのことに意欲が無くなり、趣味も停止したとのこと。明らかに精神に異常をきたしています。健康ではないことは明らかですね。
一日に2000キロカロリーならば、痩せるかどうかは微妙な数字です。にもかかわらず、1カ月当たり5kgもの減量しています。彼の体内でいったい何が起こったのでしょう?
筋肉は脂肪の3倍重い
体内で日々合成されるタンパク質は400g程度と言われています。しかし、毎日の摂取量は400gよりも大きく下回っています。特別に多く摂取しているアスリートでも
200gいかないでしょう。それでも体内のタンパク質量が維持されているのは、体内でオートファジーによる再利用分も含めての数字が400gだからです。実際に摂取しなければいけない量は100g程度です。
アイスクリームダイエットは100gどころか、ほとんど摂取していないので体内では圧倒的にタンパク質不足に陥ります。タンパク質は代謝に必要な酵素や、各器官に作用して働きを調整するホルモンの原料です。
体内で必要なタンパク質量が確保できないと、貯蔵庫である骨格筋の分解が亢進します。骨格筋を犠牲にしても酵素やホルモンを確保するのは、これらがないと生命の維持ができないからです。骨格筋は脂肪と比べると同体積比で3倍の重量になりますので、体重減少はダイエット初期から相当顕著に表れたでしょう。結果、15kgもの減量につながったと考えられます。
この例は極端ですが、いわゆる単品(りんご、バナナなど)ダイエットを行うとこれに近い状態に陥り、骨格筋減少によって、1,2kg程度は体重がすぐに落ちます。かなり大雑把な計算ですが、タンパク質をほとんど取らない場合、一日に100gずつ骨格筋が落ちるとして、20日で2kgですからね。もちろん、ある程度は脂肪も落ちるのですが、タンパク質が間違いなく真っ先に落ちます。これでダイエット成功と思っていると大きな落とし穴になります。
筋肉が少ないと言う事はGLUT4が少ないと言う事ですので、筋肉への糖取り込みができず、余剰の糖が発生、脂肪に変換されやすくなります。カロリー摂取量が同じであっても、脂肪に変換される割合が高くなるのです。
太っては単品ダイエットをし、筋肉を落として・・・と繰り返すと、見た目は痩せていても、体脂肪率30%越えのいわゆる隠れ肥満の状態になります。
いわゆるデブはこれよりマシです。デブはデブなりにその巨体を支えるための筋肉が必要に応じて付いているのですが、隠れ肥満はその筋肉すらない脂肪のみの状態で、もっとも痩せにくい(見た目は痩せているのですが)厄介な状態と言えるでしょう。
有酸素運動より無酸素運動
デブ、隠れ肥満を防ぐためには、この逆、つまり、
- タンパク質を一日100gきっちり取る
- 高・中負荷無酸素運動で筋肉に変える
- 取り込みきれない糖質を減らす(糖質のバカ食いはやめる)
この3つを同時に行う必要があります。
よく言われる有酸素運動は脂肪の燃焼に効果的なのは間違いないのですが、筋肉を分解するのにも効果的と困った側面があります。また、有酸素運動では骨格筋の大部分を占める速筋を肥大化させることが難しく、結果的には筋肉量が減ることが多いようです。マラソンランナーの体が良い例ですね。
前回の記事にもあったように筋肥大をさせてマイオカインを増やすことは、運動を行っていない部分の脂肪燃焼や身体全体の耐糖能向上にも効果的ですので、肥満を防ぐためには、高負荷(あるいは中負荷)の無酸素運動を短時間行うのが良いでしょう。
注意しなければならないのは、糖質制限と筋肥大は同時には行えないと言う事です。
骨格筋が肥大化するためにはある程度の糖質が必要ですので、糖質制限を行うといくらタンパク質量と運動量をきっちり確保したとしても、インスリンがあまり出ないのでうまく同化できません。同化できないタンパク質は糖を経て、脂肪へ変換されますので、せっかく摂ったタンパク質が脂肪になるので、いいとこプラスマイナス0でしょう。
健常な人ならば、しっかり運動すればしっかり糖を取り込んでくれますので、普通に糖質を摂取すればいいと思います。もちろん、毎食茶碗に2杯+デザートも食べるとなると、さすがに消費しきれませんので、“普通に”食べる程度にしましょう。
カロリー計算は無駄ではない?
タンパク質量と糖質量の計算を行うことがもっとも重要ですが、カロリー計算が全く役に立たないわけでは無いのも事実です。エネルギーの収支計算には役に立ちませんが、体内へ取り込むエネルギー量を「管理する」あるいは「意識する」ために、カロリー計算は行う価値があると思います。
デブは単純に食い過ぎ、隠れ肥満は糖質ばかりで、タンパク質が足りていない傾向が強いです。
そこで、私からの提言として、これまでの食生活を振り返るために、カロリーベースでざっくり計算してみて、そこから減らす糖質量と増やすタンパク質量を検討してみるのは良いかと思います。
毎食きっちりカロリー計算しても良いのですが、せっかく計算するならカロリーではなく、糖質量とタンパク質量を計算すべきです。
そうすることで、これまで無意識に食べていた食事内容を改めるきっかけとするのです。食べていないと思っていても、意外と食べ過ぎていたり、あるいは、タンパク質が足りていなかったりするでしょう。
体重が増加する、あるいは体脂肪率が上がるのであれば、その食事内容は糖質過剰であると考えられます(+タンパク質不足)。糖質を減らし、その分、タンパク質を増やすだけでもずいぶんと栄養バランスは改善されるかと思います。
適正な体重を維持できる糖質量とタンパク質量は個々人によって差があるかと思いますので、こればかりはご自身で試行錯誤されるしかないでしょう。
結論です。
肥満を防止するためには、タンパク質の確保、高(中)負荷運動を習慣づける、過剰な糖質を減らす、の3点を同時に行う。また、カロリーにあまりこだわらず、糖質量とタンパク質量を計算し、食への意識を持ち、きっちりと管理することが肝要である。
ゴロー